転職活動の際に雇用保険の「基本手当(いわゆる失業給付)」を受給する人は多いものの「早く次の仕事が決まると残り日数分がもらえず損をする」と考える方も少なくありません。ですが実際には、全額受給を待たずに就職したほうが、早期就職を支援する2つの給付金によって有利になるケースもあります。今回は、基本手当から「再就職手当」「就業促進定着手当」へとつながる給付の流れを解説していきます。
「基本手当」から始まる“早期就職のメリット”
まず、ベースとなる基本手当は、退職後にハローワークで求職を申し込み、7日間の「待期期間」や退職理由に応じた「給付制限期間」(例:自己都合は1カ月)を経て支給が始まります。その後は原則4週間に1回ハローワークへ通い、求職活動の実績を確認される(失業の認定を受ける)ことで、4週間分ずつが定期的に口座へ振り込まれる仕組みです。1日あたりの支給額(基本手当日額)は、退職前6カ月間の賃金(賃金日額)の約50〜80%(年齢や賃金水準による)となります。
ここで重要になるのが、基本手当を“すべて使い切る前”で就職すること。再就職すると、その後は失業状態ではなくなるため、基本手当の支給は終了しますが、支給残日数をしっかり残して早期に次の職場を決定することが、次の2つの給付金へとつながる大切なバトンになります。
早く決まるほど得になる「再就職手当」
基本手当を残して早く就職が決まった際、最初に受け取れるのが再就職手当です。再就職手当を受け取るためには、7日間の待期期間が満了した後に就職していることや、基本手当の支給残日数が「3分の1以上」あることなど、複数の要件をクリアする必要があります(下記参照)。
特に自己都合で退職した方は、最初の1カ月間の応募経路に注意が必要です。この期間に民間求人サイト等から「自己応募」して就職すると、再就職手当は支給対象外になります。必ずハローワークや許可された職業紹介事業者の紹介を経て就職してください。
再就職手当の主な要件
1)7日間の待期期間を満了した後に就職したこと
2)基本手当の支給残日数が、所定給付日数の「3分の1以上」あること
3)離職した前の会社への再就職や、資本関係等の深い関連会社ではないこと
4)再就職先で「1年を超えて引き続き雇用される見込みがあること」
5)過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を受けていないこと
6)ハローワークへ行く(受給資格決定)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものではないこと
7)原則として、再就職先で雇用保険の被保険者になっていること
8)自己都合退職による給付制限がある場合、待期満了後1カ月間は、ハローワークまたは厚生労働大臣の許可・届出を受けた職業紹介事業者の紹介による就職であること
(※待期満了後1カ月間の自己応募による就職は、原則として対象外)
支給額は、「基本手当日額×支給残日数×給付率(60%または70%)」となります。基本手当の所定給付日数に対する支給残日数が3分の2以上あれば給付率は70%、3分の1以上なら60%です。本来、再就職によって受給できなくなる基本手当の残日数を基準に、その一部が「再就職手当」として一括・非課税で支給されるため、早期に再就職する大きなメリットになります。
転職後の賃金ダウンを補う「就業促進定着手当」
再就職手当を受給した人のうち、条件を満たすと追加でもらえるのが就業促進定着手当です。この制度は、「新しい仕事に挑戦したいけれど、前職より給料が下がってしまうのが不安」という転職後の収入ダウンを補うために設けられました。対象となるのは、再就職先に6カ月以上雇用されており、かつ再就職後の6カ月間の賃金が前職の賃金を下回っている場合です(下図参照)。
就業促進定着手当の主な要件
1)早期の再就職に成功し、すでに「再就職手当」を受給していること
2)再就職した会社に、同じ雇用主のもとで「6カ月以上」雇用されていること
3)再就職後6カ月間の賃金の1日分の額が、離職時の賃金日額より低いこと
支給額は「(前職の賃金日額-再就職後の賃金日額)×6カ月間の賃金支払基礎日数」(支給額には、基本手当の残日数などに応じた上限あり)。半年間働いた時点で前職より賃金が下がっていた場合、その目減りした分を補てんする形で給付金が一括・非課税で支給されます。なお、申請には所定の手続きが必要となるため、再就職手当の支給決定後はハローワークからの案内を確認しましょう。
基本手当を使い切ることだけにとらわれず、早めに動くことで受け取れる給付が広がり、結果として生活の安定につながるケースもあります。制度の流れを理解しておくことで、自分に合ったタイミングで次のキャリアへ踏み出しやすくなります。こうした給付金の仕組みを知っておくことは、転職活動の心強い味方になります。









