財産としての投資信託〜リスクが潜む相続と相続税評価〜

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株式相続とは異なる投資信託相続

リスクが分散され、リスクを少しでも回避しながら資産を形成しやすい投資信託は、退職金の運用などをはじめとして高齢者にも人気が高まっています。実際、シニア世代の方が金融資産の保有残高が高い傾向にあり、金融各社はシニア向けの商品やサービスの提供に余念がありません。

両親や親族に資産運用をしている人がいれば、投資信託を相続することもあるでしょう。投資信託の相続は株式相続と異なる点もあり、注意すべきポイントがあります。投資信託の財産評価額の計算や相続税などについて、見ていきましょう。

種類によって異なる、投資信託の財産相続評価額の計算方法

投資信託の相続のプロセスの一つに、残高証明があります。契約している証券会社から取り寄せ、残高証明に表記されている内容によって相続時の投資信託の財産評価額が決定します。財産として相続した時の投資信託評価については、国税庁による財産評価基本通達199に定められており、証券会社等から支払いを受けることができる価額として以下の算式により計算した金額によって評価されますますが、計算式は投資信託の種類によって異なります。

・日々決算型投資信託(MMF・中期国債ファンドなど)
1口当たりの基準価額 × 口数
+ 再投資されていない未収分配金(A)
-(A)について源泉徴収されるべき所得税相当額
- 信託財産留保額および解約手数料(消費税相当額を含む)

・一般的な投資信託
課税時期の1口当たりの基準価額 × 口数
-課税時期において解約請求等をした場合に源泉徴収されるべき所得税相当額
-信託財産留保額および解約手数料(消費税相当額を含む)

課税時に基準価格がない場合もあります。その場合は課税前の基準価格で、もっとも課税時期に近い日の基準価格を用いて計算します。

・上場している投資信託(ETF・REITなど)
これらの投資信託の評価は上場株式に準じ、「課税時期の終値」「課税時期にあたる月・前月・前々月の毎日の終値平均額」のうち、もっとも低い価格で評価します。こちらも課税時に終値がない場合は、課税時期にもっとも近い日の終値で計算します。

このように相続する投資信託の種類によって評価方法が異なりますので、注意が必要です。

相続時の投資信託評価額と相続税の関係

投資信託を財産として相続した場合もちろんそのまま保有しても良いのですが、売却をするケースもあるかと思います。売却時には税金が発生しますが、相続した投資信託の基準価格により課税関係は異なります。注意すべきポイントは、相続する投資信託の評価額は「被相続人が亡くなられた日の時価」で計算されるということです。

・被相続人(亡くなった方)の取得価格より、相続後の売却時に基準価格が下落
この場合売却に伴い売却損が発生するため、相続税の「課税はありません」

・被相続人(亡くなった方)の取得価格より、相続後の売却時に基準価格が上昇
この場合は売却に伴い売却益が発生するため、「課税されます」。譲渡所得として所得税:15.315%(うち、復興特別所得税:0.315%)、住民税:5%、合計20.315%が申告分離課税対象となります。

投資信託の財産贈与を受け売却した場合、相続税の申告・納税は、相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に、放棄する場合は3ヶ月以内に行うことが定められています。さまざまな手配や相続がスムーズにいくよう、事前にどのような財産があるかについては、できれば生前に家族間で共有しておくと良いでしょう。
まだまだ先のことだから…と思っていると、気がついた時には後手後手になってしまいます。投資信託を財産として相続した場合の対応について、しっかりと心構えをしておきましょう。

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