金融緩和の円安効果は?なぜ効果が薄いのか

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日本の主要な貿易相手国の通貨に対して円がどの程度の強さなのかを示す指数に「名目実効為替レート」があり、数字が小さくなれば円安、大きくなると円高を現わします。日本銀行が推計する指数によると、異次元金融緩和策の導入前日(2013年4月3日)は106.53だったのに対し、2015年6月8日には85.63まで低下しました。その後2016年6月21日には106.86になると反転し、結局円レートは金融緩和策前の水準まで戻ってしまいました。

 

 

円安効果は確認できていない

現金と日銀当座預金のマネタリーベースは、2013年3月は135兆円だったのが、3年強に渡る日銀の金融緩和策により400兆円へ拡大されマイナス金利政策も導入されましたが円安効果についてはほとんど確認できていません。

円安効果の薄い要因は?

大胆な金融緩和やマイナス金利政策でも今ひとつ円安効果が得られない要因として、日米の金融為替当局における体制の変化が考えられます。異次元緩和策を開始した約1か月後にはFRB(米連邦準備制度理事会)によって、さらなる量的緩和策の縮小が予告されました。金融政策の方向性が見えたことは円安へと動きやすい環境に転じたと考えられ、アメリカ側も米経済が回復するためにドル高は問題ないと考えられていました。しかし日銀は追加緩和の手段として余裕がなく、残り少ない弾を撃つにはタイミングを選ばなくてはいけない状況です。FRBは金融を引き締めることへ慎重になり、アメリカのドル高に対しての寛容さを後退させている状況といえるでしょう。

円安方向に向かわない状況が続くと…

このままドル円レートが円安方向へ移行しなければ、日本の生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価総合指数の前年比は少しずつ下降していくと考えられます。賃金が上昇されて、為替が物価に与える影響が相殺されるといったことも期待できる状況ではありません。

一方銀行ローンの状況は?

2016年6月16日での日銀黒田総裁の会見によると、銀行ローンについて、持ち家向けは伸びていないけれど賃貸物件向けは伸びつつあると発表しています。しかし賃貸物件の供給が今よりも増加していけば、大きく消費者物価総合指数の比率を占めている家賃は上昇することなくインフレを目指すことの逆効果になり得えます。世界の中央銀行の中で、物価上昇2%を目標に掲げているところはほとんど実現できていない状況です。

日銀の今後の対応は?

現在海外ファンド筋から円高を仕掛けられやすくなっている状況については否定できないところがあります。FRBが円高圧力を和らげる時が来た時に、インフレ目標を中長期化していくようにするほうが良いと考えられます。そのような中でも日銀は、短期に実現が難しいものに対しても早期に達成するために躊躇ない対応を行うことを明言しています。

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