コロナ禍で注目が高まった「ベーシックインカム」とは?

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2020年にコロナ禍での緊急経済対策として、特別定額給付金一律10万円が給付されたのは記憶に新しいところです。その流れで、日本でも注目が高まっているのが「ベーシックインカム」という考え方。ベーシックインカムとは、生活する上で必要な最低限の金額を全国民に支給する政策構想のことです。

生活保護との違い

日本の所得補償制度には「生活保護」がありますが、生活保護は原則、世帯単位での支給です。これに対して、ベーシックインカムは個人単位での支給を原則とし、1人1人の所得を補償するという考え方である点が生活保護とは違います。

コロナ禍以前から、欧米諸国の一部でベーシックインカム導入の実証実験が行われてきました。例えば、フィンランドでは、2017年から2年間、失業者2000人を対象に月7万円を給付する実験を行いました。フィンランド政府はこの実験について、「雇用への影響は限定的だが、給付を受けた人たちの精神的な健康度は増した」と結論づけています。

また、アメリカのカリフォルニア州ストックトン市では、2019年から2年間、市の住民125人を対象に、毎月約5万4000円を支給する実験を実施。その効果は肯定的に受け止められ、その後同州オークランド市やロサンゼルス市でも実験が始められました。

一方、日本では現時点で実証実験は行われていません。ただ、日本でもベーシックインカムの議論は活発化しており、ベーシックインカム導入検討を公約にする政党も現れています。

具体的に、ベーシックインカムのメリットと言われる点を見ていきましょう。

【メリット】

①貧困や少子化の対策・解消
国民は最低限の生活を維持できるようになる。金銭面の不安を理由に子どもを持てなかった人々にとっても追い風となる。

②心の余裕が生まれる
フィンランドの実証実験でも受給者は精神的な健康度が増すという結果が出ており、より自由で意欲的に活動できるようになる
と考えられる。

③長時間労働の削減・労働環境の改善
生活のために労働に縛られる状況が緩和される。より安全で快適な働き方ができる企業を選択できるようになり、やがて労働環境の悪い企業は淘汰されていく。

④経費削減
現行の生活保護制度とは違い、全国民に一定金額を支給するというシンプルな制度なので、行政の業務負担やそれに伴う人件費の軽減が見込まれる。

ただし、ベーシックインカムが簡単に実現しないのはデメリットも存在するからです。

【デメリット】

①財源確保の難しさ
全国民に一定金額を支給し続けるためには、莫大な資金が必要。その予算の目途は立っていない。

②現行の社会保障制度との整合性
ベーシックインカム導入に際して、従来の保障を廃止することを前提としている場合も多い。社会福祉制度の質が低下する懸念がある。

③勤労意欲の減退
何もせずとも生活が保障されるようになると、労働意欲がなくなる・減るという考え方もある。

以上のように、ベーシックインカムにはメリット・デメリットの両面があり、日本での導入の現実性については何ともいえません。とはいえコロナ禍の影響もあり、世界中で盛んに議論されていることも事実ですから、今後の動きを注視してきたいところです。

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